プログレス・ソフトウェア、2Q売上予想下回り株価12%急落──AI強化も市場は厳しい評価

売上成長でも株価急落──投資家を驚かせた2Q決算
みなさんは、好調な業績にもかかわらず株価が大きく下落する場面を見たことがありますか?2025年7月、プログレス・ソフトウェア(PRGS)はまさにそんな展開となりました。第2四半期の決算発表後、株価は12%も急落。売上や利益は前年同期比で大幅増だったにもかかわらず、市場の期待をわずかに下回ったことで、投資家心理は一気に冷え込みました。
業績ハイライト:EPSは上回るも売上は僅差で未達

2025年第2四半期の売上高は2億3,700万ドルで、前年同期比36%増と力強い成長を見せました。しかし、市場予想の2億3,753万ドルをわずかに下回る結果となりました。EPS(1株当たり利益)は1.40ドルと予想(1.30ドル)を上回り、営業利益率も40%と高水準。年間経常収益(ARR)は前年同期比46%増の8億3,800万ドルに達し、純保持率は100%を維持しています。
それでも「売上未達」という一点が、投資家の期待に水を差す形となりました。
なぜ株価は12%も下落したのか?
「これだけ好調なのに、なぜ株価が急落?」と疑問に思う方も多いでしょう。実は、現在のテック市場では「予想を超える成長」が当たり前とされており、僅かな未達やマージンの悪化も厳しく評価されます。今回、プログレス・ソフトウェアはEPSやARRで好結果を出したものの、3四半期連続でグロスマージンが低下し、ARRの四半期成長も減速傾向。これらの点が「成長の持続性」や「利益率」への懸念として意識され、短期的な売り圧力につながりました。
AI強化戦略──Nuclia買収の狙いと市場の反応
今回の決算発表と同時に、プログレス・ソフトウェアはAIスタートアップNucliaの買収を発表しました。NucliaはRAG(Retrieval-Augmented Generation)技術を持つ企業で、企業データを活用した高精度な生成AIソリューションを提供しています。CEOのヨゲシュ・グプタ氏は「Nucliaの技術を既存製品群に組み込むことで、顧客価値を高める」と強調。しかし、買収規模が小さく2025年業績への直接的なインパクトは限定的とみられ、AIブームの中で期待値が高まる投資家には物足りない内容となりました。
経営陣のコメントと今後の見通し
グプタCEOは「全地域で力強い売上成長を実現し、ShareFileの統合も順調」と自信を示しました。実際、ShareFileは今や売上の25%以上を占め、シナジー効果も着実に進行中です。2025年通期の売上ガイダンスは9億6,200万~9億7,400万ドル、EPSも5.28~5.40ドルへと上方修正されました。経営陣は引き続きM&AやAI領域への投資に積極姿勢を見せています。
市場環境と投資家心理:AIバブル下の「期待プレミアム」
現在のグローバル市場では、AIやSaaS企業の成長性に対する期待が非常に高く、「ちょっとした未達」も厳しく評価されがちです。特に米国株市場では、短期的な業績インパクトやマージン動向が株価に直結します。今回のプログレス・ソフトウェアのケースも「期待値の高さ」と「現実とのギャップ」が如実に表れた例と言えるでしょう。
日々の株価推移と今後の注目ポイント
決算発表直後は時間外取引で一時2.2%上昇したものの、翌営業日には12%急落。その後も55ドル近辺で不安定な値動きが続いています。年初来ではS&P500が上昇する中、PRGSは10%超の下落。今後はAI関連の新製品展開やM&A進捗、マージン改善策に市場の注目が集まりそうです。
投資家へのメッセージ──「数字の裏側」に目を向けて
今回の急落は、短期的な期待外れと市場心理の変化が大きな要因ですが、ARRや営業利益率など基礎体力は依然として高水準です。長期投資家にとっては、こうした急落局面こそ企業の成長ストーリーや経営戦略を冷静に見直す好機かもしれません。AI・デジタル化の波に乗るProgress Softwareの今後に、引き続き注目です。