ガザ地区で混乱の援助配給開始 - 住民数千人が殺到、イスラエル軍が警告射撃

May 28, 2025
ガザ地区で混乱の援助配給開始 - 住民数千人が殺到、イスラエル軍が警告射撃

ガザ人道財団による援助配給が混乱の中で開始

2025年5月27日、アメリカとイスラエルが主導する「ガザ人道財団」(GHF)によるガザ地区での食料配給が正式に開始されました。この配給は、イスラエルによる11週間にわたる封鎖の後、初めての大規模な人道支援となりました。イスラエル軍の発表によると、ガザ地区南部のラファに2カ所の配給拠点が設置され、午前9時30分から運営が開始されました。

しかし、深刻な食料危機に陥っているガザ住民数千人が配給所に殺到し、現場は一時混乱状態となりました。ロイター通信によると、住民がフェンスを破壊し、雑踏整理の柵をよじ登ろうとする様子が確認されており、イスラエル軍が警告射撃を行う事態にまで発展しました。この混乱により、少なくとも3人が負傷したと報告されています。

ガザ人道財団は初日に約8,000箱の食料を配布し、これは46万2,000食分に相当すると発表しました。財団は配給量を毎日増やし、今週末までにはガザ人口の60%にあたる120万人に食料を届けることを目指すとしています。

財団トップの突然の辞任が波紋を呼ぶ

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配給開始のわずか2日前の5月25日、ガザ人道財団のジェイク・ウッド事務局長が突然辞任を発表し、人道支援界に衝撃を与えました。ウッド氏は辞任理由について、「人道的な原則や独立性を守りながら計画を実行するのは不可能だ」と述べ、財団の運営方針に深刻な懸念を表明しました。

この辞任は、財団がイスラエルとアメリカの強い影響下にあることを示唆しており、国際的な人道支援の中立性に関する議論を再燃させています。ウッド氏の辞任により、財団の信頼性と独立性に対する疑問が高まっており、他の国際機関との協力関係にも影響を与える可能性があります。

人道支援専門家たちは、このような政治的な影響を受けた支援体制では、真の人道的原則を維持することが困難であると指摘しています。特に、軍事的な管理下での援助配給は、受益者の安全を脅かす可能性があるとの懸念が表明されています。

国連と国際機関が協力を拒否

国連をはじめとする主要な国際人道支援機関は、ガザ人道財団との協力を拒否する姿勢を明確にしています。国連の担当者は、アメリカ主導の財団による食料配布について、「すべての検問所開放という根本的に必要な支援から目を背けるものである」と厳しく批判し、国境などによる物資搬入のさらなる拡大を求めています。

国連は中立性を保てないなどとして参加しない方針を表明しており、これは国際的な人道支援体制における深刻な分裂を示しています。ガザ地区の当局は、1日あたり500台のトラックの支援物資が必要だと述べており、現在の配給規模では深刻な食料不足の解消が見込まれるかどうかは不透明な状況です。

国際人道支援の専門家たちは、政治的な動機に基づく支援体制では、効果的な人道支援を実現することは困難であると警告しています。特に、軍事的な管理下での配給システムは、従来の人道支援の原則に反するものであり、長期的には受益者の安全を脅かす可能性があると指摘されています。

現場での混乱と住民の絶望的な状況

5月28日の配給現場では、深刻な食料不足に陥った住民数千人が配給所に押し寄せ、制御不能な状況となりました。現場にいた住民のワフィク・クデイさんは、「米国人と軍隊が包囲する場所にたどり着いた。近寄ろうとしたけれど人が多すぎて何も手に入らなかった」と証言しています。

イスラエル軍が宙に向けて発砲し、米国人や職員が後退したため、支援物資の配給ができなくなる事態も発生しました。住民は「彼らは秩序を望むけれど、みんな食べ物と水を求めて必死なので、秩序などない」と絶望的な状況を語っています。フェンスが破壊される事態となり、ガザ人道財団は安全に配布できるよう一時的に撤退を余儀なくされました。

国連の高官はガザ地区の人々の映像に「胸が張り裂けそうだ」と述べ、人道支援の規模を拡大することが不可欠だと指摘しました。イスラエルによる人道支援の封鎖は11週間に及び、200万人あまりのガザ住民は飢餓寸前に追い込まれて人道危機が一層深刻化していました。

ハマスと住民の複雑な反応

ガザ人道財団による配給に対して、イスラム組織ハマスは強い反発を示しています。ハマスは、この配給システムが物資の略奪を防ぐという名目でイスラエルとアメリカが主導していることを問題視しており、住民に対して配給所への参加を控えるよう呼びかけています。

一方で、深刻な食料不足に直面している住民の中には、政治的な立場を超えて生存のために配給を受けざるを得ない状況にある人々も多数います。この複雑な状況は、人道支援が政治的な道具として利用される危険性を浮き彫りにしています。

パレスチナの非政府組織(NGO)代表は、「イスラエルが人道原則に反して支援を封鎖し、飢餓をあおっておきながら、このようなやり方の配布が通用すると考えているのなら、それは間違いだ」と厳しく批判しています。住民は食料支援はありがたいが、遠くから歩いて配給所までたどり着き、長蛇の列に並んで混乱に巻き込まれる状況に困惑を示しています。

深刻化する栄養失調と医療危機

世界食糧計画(WFP)は5月24日、ガザの子ども7万人以上が深刻な栄養失調に直面していると発表しました。2カ月半ぶりに支援物資の搬入が再開されたものの、国連によるとイスラエルが搬入を認めたのは「小さじ1杯分に過ぎない」としており、根本的な解決には程遠い状況です。

支援物資を積んだトラック15台が略奪されるなどの事件も発生しており、「空腹や絶望が治安悪化を招いている」とさらなる物資搬入の必要性が訴えられています。ガザ地区では約90台分のトラックによる支援物資が届き始め、約2か月ぶりにパン店が営業を再開していますが、深刻な医薬品不足が続いています。

パレスチナ赤新月社によると、燃料が不足しているため、救急車の稼働率が3分の1程度まで落ち込んでいる状況です。チャイルド・ファンド・ジャパンなどの国際NGOは、95ヵ所で給水車による安全な水19,215立方メートルを届けるなど、限られた条件の中で支援活動を継続していますが、全体的なニーズに対しては圧倒的に不足している状況が続いています。

今後の展望と国際社会の課題

イスラエルのネタニヤフ首相は、近くガザ地区に人道支援物資の配給地区が完成するとした上で、「最終的にはガザ南部に大規模な安全地帯を設け、他の地域では戦闘を継続する」と述べています。この発言は、人道支援が軍事戦略の一部として位置づけられていることを示しており、真の人道的解決からは程遠い状況を浮き彫りにしています。

一方、停戦交渉に関しては、仲介国のアメリカのウィトコフ中東担当特使が新たな案を受け入れるようハマスに迫っているとCNNに明らかにしています。生存している人質の半数とすでに死亡している人質の遺体半数を引き渡すことで一時停戦を実施するという提案ですが、交渉は難航している状況です。

国際社会は、政治的な思惑を超えた真の人道支援の実現に向けて、より効果的な枠組みの構築を迫られています。現在のガザ人道財団による配給システムは、短期的な食料供給には一定の効果があるものの、根本的な問題解決には至っておらず、むしろ人道支援の政治化という新たな問題を生み出している可能性があります。今後は、国際的な合意に基づく中立的で持続可能な支援体制の確立が急務となっています。

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