テスラ中国で8か月連続減少、5月は前年比15%減の衝撃 BYDは14%増で明暗分かれる

衝撃の8か月連続減少:テスラ中国事業の深刻な現実
皆さんはご存知でしたか?テスラが中国で8か月連続の販売減少を記録しているという衝撃的な事実を。2025年5月、中国乗用車協会(CPCA)が発表したデータによると、テスラが中国で生産した「モデル3」と「モデルY」の出荷台数は前年同期比15%減の6万1662台となりました。これは4月の6%減からさらに悪化した数字で、テスラにとって極めて深刻な状況を示しています。
興味深いことに、前月比では5.5%の増加を見せたものの、年間ベースでの減少傾向は止まりません。この8か月連続の減少は、テスラが中国市場で直面している構造的な問題を浮き彫りにしています。中国はテスラにとって米国に次ぐ第2の市場であり、上海ギガファクトリーは年間約100万台の生産能力を持つ重要な拠点です。
特に注目すべきは、この減少が単なる一時的な現象ではないということです。2024年10月から始まったこの下降トレンドは、中国EV市場における激しい価格競争と、地元メーカーの台頭という根深い要因に起因しています。テスラの中国事業の重要性を考えると、この状況は投資家にとって非常に懸念すべき材料となっています。
BYDの圧倒的勝利:中国EV市場の新たな覇者

一方で、テスラの最大のライバルである中国大手BYD(比亜迪)の5月の世界販売台数は前年同期比14.1%増の37万6930台を記録しました。この数字を見ると、テスラとBYDの明暗がはっきりと分かれていることが分かります。BYDはテスラの6倍以上の販売台数を達成しており、中国EV市場での圧倒的な存在感を示しています。
さらに驚くべきことに、BYDは先月、欧州での販売台数で初めてテスラを上回ったという報告もあります。これは、BYDが単に中国国内だけでなく、グローバル市場でもテスラに挑戦していることを意味します。BYDの成功の背景には、手頃な価格設定、急速な製品開発サイクル、そして中国政府の支援があります。
中国EV市場全体を見ると、新エネルギー車(NEV)の卸売納車台数は前年同期比38%増の124万台に達すると予測されています。この成長する市場でテスラが苦戦している一方で、BYDをはじめとする中国メーカーが着実にシェアを拡大している現実は、EV業界の勢力図が大きく変わりつつあることを示しています。
価格競争の激化:40社以上が参戦する値下げ合戦
中国EV市場では現在、40社以上のメーカーが参加する激しい価格競争が繰り広げられています。この状況は、中国政府がメーカーに対して損失を抑制するよう助言するほど深刻化しています。テスラも例外ではなく、販売促進のために様々な戦略を展開しています。
最近では、テスラが中国で6月末まで新車への知能運転支援機能の移転を提供するプロモーションを実施しました。また、充電特典や低金利融資なども提供して、年初の低調なスタートから販売を回復させようと努力しています。さらに注目すべきは、今年初めてテスラ車が中国政府支援の農村部でのEV販売促進キャンペーンに追加されたことです。
しかし、これらの促進策は同時に、テスラが利益率を犠牲にしてでも販売量を維持しようとしていることを示しています。中国の競合他社は、より低価格でありながら、テスラと同等またはそれ以上の機能を提供する車両を投入しており、テスラの価格優位性は大きく損なわれています。
技術面での遅れ:自動運転分野で中国勢に後塵
テスラが中国で苦戦している理由の一つに、最先端の運転支援機能の提供で中国のEVメーカーに後れを取っていることがあります。テスラは米国以外で最大の市場である中国で、完全自動運転(FSD)ソフトウェアのアップグレード版を導入しようとしていますが、規制当局の承認をまだ得られていません。
一方、中国の自動車メーカーは政府の承認を得て、テスラが中国で利用できるものよりも高度な運転支援機能を、しばしばより低価格で提供しています。例えば、中国の有力EVスタートアップであるXPengは最近、AIテクノロジーを活用した市街地走行と信号対応が可能な全国規模の運転支援システムを開始しました。
現在、テスラの中国で利用可能なソフトウェアは約4500ドルで価格設定されている一方、地元の競合他社は通常、より安価に提供するか、顧客に無料で提供しています。この価格差は、中国の消費者の間でテスラの魅力を減少させていると分析されています。テスラの元技術幹部は、テスラが運転支援技術で中国の競合他社より2年先行していると述べていますが、規制承認の遅れがその優位性を活かせない状況を作り出しています。
グローバル市場での苦戦:欧州でも販売急減
テスラの苦戦は中国だけに留まりません。欧州市場でも深刻な販売減少に直面しています。4月のテスラの欧州での販売台数は前年同期比49%減の7261台となり、市場シェアも1.3%から0.7%に低下しました。これは、欧州の電気自動車市場全体が34.1%成長している中での減少であり、テスラの競争力低下を如実に示しています。
この欧州での不振には、イーロン・マスクCEOの政治的活動が影響しているとの分析もあります。欧州の消費者は、ブランドの政治的立場に特に敏感であり、マスクの論争的な発言や行動がテスラブランドのイメージに悪影響を与えている可能性があります。
さらに、テスラの製品ラインナップの老朽化も問題となっています。最近のモデルYのリフレッシュは大きな注目を集めることができず、ブランドイメージはマスクCEOの論争、特に政治的行動に関連した問題によって損なわれています。米国、中国、欧州という主要市場での納車数減少は、テスラの2025年通年の売上成長達成能力に疑問を投げかけています。
投資家への影響と今後の展望:株価下落と成長鈍化の懸念
これらの販売不振は、テスラの株価にも深刻な影響を与えています。テスラの株価は年初来で30%以上下落しており、投資家の間では成長ストーリーへの疑問が高まっています。現在のテスラの予想売上高倍率は8.41倍と業界平均を大幅に上回っており、バリュエーション面でも割高感が指摘されています。
Zacksのコンセンサス予想では、テスラの2025年の収益は前年比22%減少すると予測されており、同社の株式は現在「Strong Sell」の格付けを受けています。継続的なグローバル関税の不確実性と中国での弱さが懸念材料となり、テスラは2025年の納車ガイダンスの再確認を控えています。
しかし、すべてが悲観的というわけではありません。6月12日に予定されているロボタクシーサービスの発表が、新たな成長機会を提供する可能性があります。WedbushSecuritiesのアナリストは、テスラの目標株価を400ドルから515ドルに引き上げ、同社の自動運転車とAI戦略に関連する重要な評価機会について言及しています。ただし、この楽観的な見通しも、現在の販売実績と主要市場での激化する競争という現実と照らし合わせて慎重に評価する必要があります。
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