マスク氏がトランプを痛烈批判「減税法案は忌まわしい醜悪な存在」

Jun 5, 2025
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マスク氏がトランプを痛烈批判「減税法案は忌まわしい醜悪な存在」

史上最も激しい政治的決裂

2025年6月3日、世界で最も裕福な男であるイーロン・マスク氏が、ドナルド・トランプ大統領に対して史上最も激しい政治的攻撃を仕掛けました。マスク氏は自身のSNS「X」で、トランプ政権の看板政策である減税法案について「申し訳ないが、もう我慢できない。この巨大で、あまりにもひどい無駄遣いの法案は、極めて不快な忌まわしい存在だ」と投稿しました。

この言葉の激しさは、ワシントンの政治関係者たちに衝撃を与えました。わずか数日前まで、マスク氏はトランプ政権で「特別政府職員」として政府効率化省(DOGE)を率いていた人物です。5月30日に政権を離れたばかりのマスク氏が、これほど激烈な言葉で元上司を批判するとは、誰も予想していませんでした。

ホワイトハウスの反応は冷淡でした。カロライン・レビット報道官は「大統領はすでにイーロン・マスクがこの法案についてどう考えているかを知っており、大統領の意見は変わらない。これは一つの大きく美しい法案であり、大統領は支持している」と述べました。この素っ気ない回答は、両者の関係が完全に破綻したことを物語っています。

問題となった「大きく美しい法案」の内容

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トランプ大統領が「一つの大きく美しい法案」と呼ぶこの税制・歳出法案は、アメリカの財政政策を根本的に変える可能性を秘めた巨大な立法です。法案の核心は、2017年に導入された個人所得税減税の恒久化にあります。これらの減税措置は主に富裕層と企業に恩恵をもたらすものでした。

さらに法案には、トランプ氏の選挙公約の目玉である新たな税制優遇措置も含まれています。レストランの従業員に支払われるチップや残業代への課税免除がその代表例です。一見すると労働者に優しい政策に見えますが、その財政的影響は深刻です。

超党派の議会予算局(CBO)の試算によると、この法案が成立すれば、今後10年間で連邦政府の債務が3.8兆ドル増加する可能性があります。現在すでに36兆ドルを超えているアメリカの国債残高に、さらに巨額の負債が加わることになります。マスク氏が「アメリカ国民に耐え難いほどの借金を背負わせることになる」と警告したのは、まさにこの点を指しています。

マスク氏の怒りの背景

なぜマスク氏はこれほど激怒しているのでしょうか?その背景には、彼が政府効率化省で取り組んできた仕事との根本的な矛盾があります。マスク氏は130日間にわたって「特別政府職員」として、政府の無駄な支出を削減する任務に従事していました。彼の目標は、アメリカ政府をより効率的で財政的に責任ある組織に変革することでした。

ところが、トランプ大統領が推進するこの法案は、マスク氏の努力を根底から覆すものでした。減税によって政府収入を大幅に減らしながら、同時に防衛予算の増額も盛り込まれているのです。これは財政規律の観点から見れば、まさに正反対の方向性です。

マスク氏の怒りは、単なる政策論争を超えた個人的な裏切り感にも根ざしています。彼は昨年、トランプ氏の選挙キャンペーンに少なくとも2億5000万ドルを投じて支援しました。その見返りとして政府効率化の重要な役職を得たにもかかわらず、その成果を台無しにするような政策が推進されているのです。

共和党内部の亀裂が露呈

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マスク氏の激しい批判は、共和党内部に存在していた財政政策をめぐる深刻な対立を表面化させました。ウィスコンシン州のロン・ジョンソン上院議員、フロリダ州のリック・スコット上院議員、ケンタッキー州のランド・ポール上院議員など、複数の共和党議員が法案の総費用について懸念を表明しています。

特に注目すべきは、下院でこの法案に反対票を投じた数少ない共和党議員の一人、ケンタッキー州のトーマス・マッシー下院議員の反応です。マスク氏の批判に対して「彼は正しい」とコメントし、マスク氏も「単純な数学だ」と応じました。この交流は、財政保守派の議員たちがマスク氏の立場を支持していることを示しています。

一方、共和党指導部の反応は対照的でした。マイク・ジョンソン下院議長は「私の友人イーロンは完全に間違っている」と述べ、ジョン・スーン上院多数党院内総務も「アメリカ国民が我々を選んだ仕事がある。皆が選挙戦で公約した議題、特に大統領が公約した議題があり、我々はそれを実行する」と反論しました。

テスラ株価と市場への影響

この政治的対立は、金融市場にも波紋を広げています。テスラの株価は、マスク氏とトランプ大統領の公開的な対立を受けて変動を見せました。投資家たちは、この政治的緊張がテスラの事業にどのような影響を与えるかを注視しています。

マスク氏とトランプ政権の密接な関係は、これまでテスラにとって有利に働いていました。SpaceXのNASAとの契約や、自動運転技術に関する規制緩和への期待などがその例です。しかし、この関係の悪化により、そうした恩恵が失われる可能性が高まっています。

実際、トランプ大統領はマスク氏の盟友であるジャレッド・アイザックマン氏のNASA長官指名を取り下げるという報復措置を取りました。これは両者の関係がもはや修復不可能な段階に達していることを示唆しています。テスラの自動運転タクシー事業は、6月にオースティンで重要なテストを予定しており、規制当局の支援が不可欠な状況です。

国際的な反響と経済への懸念

この米国内の政治的混乱は、国際社会にも大きな影響を与えています。アメリカの財政政策は世界経済全体に波及効果をもたらすため、各国の政府や中央銀行が注視している状況です。特にヨーロッパの政策立案者たちは、アメリカの財政規律の緩みが世界的なインフレ圧力や金利上昇につながることを懸念しています。

中国の当局者たちは、アメリカの政治的分裂が中国にとって有利な機会を創出する可能性があると指摘しています。アメリカが内政問題に集中している間に、中国が国際的な影響力を拡大できるという計算です。

多国籍企業も、この政治的不確実性を受けてアメリカへの投資戦略を見直し始めています。税制政策の行方が不透明な中で、大規模な投資決定を延期する企業が増えているのが現状です。

今後の展望と両者の関係

この対立の行方は、アメリカ政治の今後を大きく左右する可能性があります。マスク氏は2億2000万人を超えるXのフォロワーを持ち、若い世代や技術系労働者に強い影響力を持っています。彼の政治的立場の変化は、これらの有権者層の動向にも影響を与える可能性があります。

一方、トランプ大統領にとって、マスク氏の支持を失うことは単なる高位の離反者を失うこと以上の意味があります。それは若い有権者、技術系労働者、そしてアメリカの未来を象徴する革新者たちからの信頼を失うことを意味します。

法案は現在上院で審議されており、共和党が多数を占めているものの、マスク氏の批判が既存の党内対立を激化させる可能性があります。7月4日までの成立を目指すトランプ大統領の計画が、この政治的混乱によってどの程度影響を受けるかが注目されています。両者の関係修復の可能性は低く、この対立がアメリカの政治と経済に長期的な影響を与えることは避けられそうにありません。

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