2025年ハッジ、猛暑と新ルールの中で150万人超がメッカに集結―AI・医療・規制強化で安全最優先

ハッジとは?イスラム教最大の聖地巡礼
ハッジはイスラム教の五行の一つであり、体力と財力のあるムスリムは人生で一度はメッカを訪れる義務があります。2025年は6月2日から9日まで実施され、世界中から150万人以上がサウジアラビア西部メッカに集結しました。巡礼者たちはカーバ神殿を周回し、アラファト山で祈りを捧げ、動物の犠牲や悪魔の石投げなど伝統的な儀式を行います。
この巡礼は、信仰の証であると同時に、世界最大級の宗教的イベントでもあります。
2025年の新ルールと規制強化―未登録者は厳しく排除

昨年のハッジで1300人以上が熱中症などで亡くなったことを受け、2025年は規制が大幅に強化されました。サウジ当局は無許可の巡礼者26万人以上を追放し、許可証のない入場は厳しく取り締まられています。子ども(12歳未満)の参加も禁止され、初めての巡礼者が優先される仕組みとなりました。
ビザや登録手続きもデジタル化され、「Nusuk」プラットフォームを通じて一元管理されています。
猛暑対策の最前線―AI・冷却インフラ・日陰エリアの拡大
2025年のハッジ期間中、メッカの気温は連日40度を超え、最高47度に達する日も予想されました。サウジ政府は巡礼ルートに400以上のミストシャワーや冷却ステーションを設置し、日陰エリアを5万平方メートル拡大。地面の温度を下げる白い道路や冷却歩道も導入されました。
AIやドローンによる群衆監視が強化され、危険な混雑や熱中症リスクをリアルタイムで検知・対応しています。
医療・健康管理―5万人超の医療スタッフと最新の救急体制
サウジアラビアは、5万人以上の医療スタッフを動員し、183の医療センターと11機の救急ヘリを配備。ハッジ期間中、5万人以上の巡礼者が治療を受け、2万人超が救急対応を受けました。
参加者は髄膜炎やインフルエンザ、COVID-19ワクチン接種が推奨され、メルス(MERS)対策としてラクダとの接触や生乳・生肉の摂取も厳禁です。手洗いやマスク着用など衛生管理も徹底されています。
巡礼者の体験と現場の声―暑さと信仰、支え合いの現場
巡礼者たちは白い衣装をまとい、夜明け前から日傘や水を手に巡礼ルートを歩きます。多くの高齢者にとって猛暑は大きな負担ですが、冷房付きテントやミストシャワー、ボランティアによるサポートが力強い味方となっています。
「サウジ政府は水やエアコン付きテントなど、必要なものをすべて提供してくれた」との声もあり、現場では助け合いと団結の精神が感じられます。
イード・アル=アドハーとハッジ―祝祭と巡礼の融合
2025年のイード・アル=アドハー(犠牲祭)は6月6日から9日まで、ハッジ期間と重なって行われます。巡礼者たちは礼拝後に動物を犠牲にし、その肉を家族や貧しい人々と分かち合います。
この祝祭は、信仰の実践と社会的連帯を象徴する重要な行事です。
経済・文化的インパクト―巨大イベントがもたらすもの
ハッジはサウジアラビア経済に数十億ドル規模の収入をもたらし、観光・交通・医療・ITなど多様な産業を活性化させます。一方で、参加費の高騰や規制強化が社会的議論を呼んでおり、特に発展途上国の巡礼者にとっては大きな負担となっています。
それでも、世界中のムスリムが一堂に会するこのイベントは、宗教的・文化的な絆を深める貴重な機会となっています。
日別まとめと現地の最新動向
6月2日:巡礼者がメッカに到着し、厳格な健康チェックとデジタル登録を実施。
6月4日:ハッジが本格開始、150万人超が参加。無許可者の排除や新ルールの徹底が話題に。
6月5日:アラファト山での祈りがピーク、40度超の猛暑の中で冷却インフラが活躍。
6月6日:イード・アル=アドハー開始、動物犠牲や家族・地域での祝祭が行われる。
6月7日以降:巡礼の主要儀式が続き、医療・安全体制の成果として熱中症などの重大事故は大幅に減少との報告も。