ロンドンで再び対峙:米中第2次貿易協議、焦点はレアアースと輸出規制

ロンドンで始まった米中第2次貿易協議、その舞台裏
皆さんは、2025年6月9日にイギリス・ロンドンで米中の閣僚級貿易協議が始まったことをご存じですか?今回の協議は、5月のジュネーブ合意に続く2度目の高官会談であり、世界経済の今後を左右する重要な局面です。両国の間では関税だけでなく、レアアースやハイテク製品の輸出規制が最大の争点となっています。
米国側からはベサント財務長官、ラトニック商務長官、グリアUSTR代表が参加し、中国側は何立峰副首相が率いる代表団が出席。英国政府は中立的な立場で会場を提供し、各国メディアや市場関係者もこの協議の行方を注視しています。
なぜ今、ロンドンなのか?背景にある緊張と駆け引き

5月のジュネーブ合意では、両国が90日間の関税引き下げと一部非関税措置の緩和で合意しました。しかしその後、米国は中国によるレアアース輸出規制の解除が不十分だと主張し、中国側も米国の対中制裁やハイテク輸出規制が続いていると反発。
この膠着状態を打開するため、トランプ大統領と習近平主席が6月5日に電話会談を行い、閣僚協議の再開で一致しました。トランプ大統領はSNSで「レアアース供給問題は解決に近づいている」と強調し、中国側も一部輸出承認の方針を示しましたが、実際の進展は未知数です。
レアアースが象徴する米中サプライチェーンの攻防
今回の協議で最大の焦点となっているのがレアアース(希土類)です。中国は世界のレアアース採掘の約70%、加工の90%以上を担い、米国や日本のハイテク産業にとって不可欠な資源です。
中国はこのレアアース輸出規制を交渉の切り札として活用し、米国の製造業やサプライチェーン全体に大きな影響を与えることが可能です。一方、米国は中国に対し、レアアースの安定供給と引き換えにハイテク輸出規制の緩和を求めています。両国の駆け引きが今後の世界産業構造を左右することは間違いありません。
交渉の主役たちと各国の思惑
米国側はベサント財務長官、ラトニック商務長官、グリアUSTR代表という経済・通商のキーパーソンが揃い、中国側は経済政策の実務家である何立峰副首相が交渉団を率いています。
英国は今回の協議に直接関与せず、あくまで中立的なホスト役。日本企業も中国のレアアース輸出規制が自国産業に及ぼす影響を懸念し、中国政府に対し審査迅速化などの要望を提出しています。各国が自国産業の防衛とグローバルサプライチェーン維持のために神経を尖らせているのが現状です。
議題の中心:関税、ハイテク輸出、そして信頼の回復
今回のロンドン協議では、米国が中国に対しレアアース輸出規制の撤廃を強く求め、中国は米国の半導体やAIチップなどハイテク製品の輸出規制緩和を要求しています。さらに、米国の中国人留学生へのビザ規制も議題に上がっており、双方の信頼回復が大きな課題です。
5月の合意内容が曖昧だったため、今回は具体的な数量や手続きの明確化が求められています。両国とも国内世論を意識し、譲歩を最小限に抑えたい思惑が見え隠れします。
市場の反応と日々の価格変動
協議当日、米国株式市場は小幅な値動きにとどまり、中国・香港市場ではレアアース関連株が一時上昇しました。投資家は協議の進展に慎重な姿勢を見せており、特に自動車・半導体・防衛関連企業の株価はレアアース供給の行方次第で大きく変動しています。
為替市場も大きな動きは見られませんが、協議の結果次第で今後のボラティリティが高まる可能性があります。世界の金融市場がロンドン発のニュースに一喜一憂する状況です。
経済だけじゃない、文化と戦略のぶつかり合い
米中貿易協議は単なる経済交渉にとどまりません。トランプ大統領は大統領選を意識し強硬姿勢をアピール、習近平主席も国内のナショナリズム高揚に配慮し譲歩できない立場です。
両国の歴史的な不信感や、次世代産業をめぐる主導権争いが背景にあり、レアアース問題は単なる資源供給以上の意味を持っています。今回の協議でどこまで歩み寄れるか、世界中が注目しています。
今後の展望とロンドン協議の意味
ロンドン協議は2日間にわたり開催される見通しですが、短期間で根本的な解決に至る可能性は低いと見られています。米国側は「握手で終わる小規模合意」も視野に入れており、90日間の関税猶予期間が再び延長されるかが焦点です。
中国側も対話継続の意向を示しており、「対話と協力こそ唯一の道」と強調。今後も断続的な協議が続く見通しですが、世界経済の安定には両国の歩み寄りが不可欠です。
まとめ:ロンドン発、世界経済の行方は?
今回の米中第2次貿易協議は、レアアースやハイテク輸出規制というグローバルサプライチェーンの根幹を揺るがすテーマが中心。市場や産業界は一進一退の協議に神経を尖らせ、日々のニュースに一喜一憂しています。
今後も米中両国の駆け引きと歩み寄りが世界経済の安定と成長のカギを握るでしょう。皆さんもぜひ、今後の動向に注目してみてください。
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