クアルコム、英アルファウェーブを約24億ドルで買収合意 AI・データセンター覇権へ本格始動

クアルコムによるアルファウェーブ買収、AI時代の覇権争いが加速
2025年6月9日、米半導体大手クアルコムが英国の半導体設計企業アルファウェーブを約24億ドル(約3470億円)で買収することで合意したと発表しました。このニュースは、AIやデータセンター分野の覇権を巡るグローバルな競争が本格化している象徴的な出来事です。買収額は1株あたり183ペンスで、これは3月末時点の株価に対し96%ものプレミアムが上乗せされています。アルファウェーブの取締役会もこの条件を「公正かつ合理的」と評価し、全会一致で株主に推奨する姿勢を示しました。
ロンドン市場では発表直後、アルファウェーブ株が22〜25%急騰し、年初来で117%の上昇を記録しています。
なぜ今アルファウェーブなのか?クアルコムの成長戦略

クアルコムはこれまでスマートフォン向け半導体で圧倒的なシェアを誇ってきましたが、スマホ市場の成長鈍化を受け、AIやデータセンターといった新たな成長領域へのシフトを急いでいます。アルファウェーブは、AIやデータセンター向けの高速データ転送技術「SerDes」や、低消費電力で高性能なカスタム半導体設計の分野で世界的な評価を受けてきました。今回の買収でクアルコムは、Oryon CPUやHexagon NPUといった自社のAIプロセッサとアルファウェーブの高速有線接続技術を組み合わせ、データセンター向けの包括的なソリューションを一気に拡充する狙いです。
買収条件と市場の反応、株価はどう動いた?
今回の買収条件は、アルファウェーブ株主が1株あたり183ペンスの現金もしくはクアルコム株0.01662株との交換を選択できるというものです。アルファウェーブの取締役会は現金による買収案を全会一致で承認し、株主にも推奨しています。買収成立には規制当局と株主の承認が必要で、2026年第1四半期の完了を目指しています。発表当日、アルファウェーブ株はロンドン市場で23%急騰し、クアルコム株も米国市場で4%超上昇しました。特にアルファウェーブ株は、2021年の上場以来低迷していたものの、今回の買収報道で一気に年初来高値を更新しています。
AI・データセンター分野でのシナジーと今後の展望
クアルコムのCEOクリスティアーノ・アモン氏は「アルファウェーブの高速有線接続技術は、当社の省電力CPUやNPUと完璧に補完し合う。両社の技術を組み合わせることで、AIやデータセンターのインフラ分野で圧倒的な競争力を発揮できる」と語っています。アルファウェーブのCEOトニー・ピアリス氏も「クアルコムとの連携で、より広範な製品展開と顧客基盤拡大、イノベーションの加速が期待できる」とコメント。AIやクラウド、データセンターの需要が爆発的に伸びる中、今回の買収は両社にとって大きな成長ドライバーとなるでしょう。
規制・承認プロセスとロンドン市場への影響
買収成立には、アルファウェーブ株主の75%以上の賛成と、英国をはじめとする各国規制当局の承認が必要です。すでにアルファウェーブの株主・取締役の過半数が賛成を表明しており、最大の懸念だった中国合弁事業WiseWaveも事前に売却済みで、規制リスクは低いとみられています。一方で、英国の有力テック企業が次々と海外勢に買収され、ロンドン証券取引所の地盤沈下が加速しているという指摘も多く、今回の買収もその流れを象徴しています。
日々の株価変動と投資家への影響
発表当日のロンドン市場ではアルファウェーブ株が183.60ペンスまで急騰し、年初来117%の上昇を記録しました。クアルコム株も米国市場で一時4%超上昇し、投資家からの期待の高さがうかがえます。今回の買収は、米国企業による英国資産の積極的な買収トレンドや、AI・半導体分野のグローバル競争激化を象徴する出来事です。投資家にとっては、AI・データセンター分野の成長性と、クアルコムの事業多角化戦略に注目が集まっています。
AI時代の主役を目指すクアルコムの今後
2026年第1四半期の買収完了後、クアルコムとアルファウェーブはAI・データセンター・高速通信インフラ分野で新たな成長フェーズに突入します。カスタムシリコンや先端ネットワーク技術の需要が今後も拡大する中、両社の統合は半導体業界の勢力図を大きく塗り替える可能性があります。AI時代の主役を目指すクアルコムの挑戦、今後も目が離せません。皆さんはこの買収劇、どう見ますか?