中国、希土類の輸出管理を強化継続──世界のサプライチェーンと日本企業への影響は？

中国、希土類の輸出規制をなぜ続けるのか？

皆さんはご存じでしたか？2025年5月現在、中国は希土類（レアアース）7元素の輸出管理を継続しています。米中間の関税緩和や国際的な対話が進む中でも、中国は国家安全や産業競争力の観点から、主要な資源のコントロールを手放していません。特にサマリウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ルテチウム、スカンジウム、イットリウムの7種が対象で、これらはEVや風力発電、医療機器、軍事用途など幅広い分野で不可欠な材料です。
中国政府は「国家安全保障の維持」や「国際的な拡散防止義務の履行」を理由に、2025年4月から新たな輸出許可制を導入しました。

どんな品目が規制対象？最新の管理リストをチェック

今回の輸出管理では、金属、合金、酸化物、化合物、混合物など、7元素を含む関連品目がすべて対象となっています。例えば、サマリウムコバルト磁石やジスプロシウム添加のネオジム磁石、ガドリニウム合金、テルビウムやルテチウムを含むターゲット材など、先端産業に欠かせない製品が多く含まれます。
輸出には中国商務部の許可証が必要で、申請にはエンドユーザーや最終用途の詳細な情報提出が求められます。これにより、輸出先の企業は許可取得までに最長45営業日ほど待たされるケースもあり、欧米や日本のメーカーが調達計画の見直しを迫られています。

なぜ今、希土類の管理強化なのか？中国の戦略的意図

中国が希土類の輸出管理を強化する背景には、米国などによる半導体・先端技術分野での対中規制強化への対抗や、国家戦略資源の保護という意図が見え隠れします。特に2025年2月以降、タングステンやテルル、ビスマス、モリブデンなど希少金属の管理も強化されており、中国は自国の資源を「交渉カード」として活用しています。
また、希土類の精製・加工能力も中国が世界の8割以上を占めており、単なる資源大国ではなく「サプライチェーンの要」としての地位を確立しています。

サプライチェーンへの影響と日本企業の対応

この輸出管理強化により、2025年4月の中国からの希土類輸出量は前月比16％減少しました。欧州や日本の磁石メーカーは調達遅延やコスト増に直面し、特にEVやロボット、医療機器の生産現場で影響が広がっています。
一方で、国内在庫の積み増しや代替素材の研究、リサイクル技術の強化など、各社がリスク分散を急いでいます。中国政府は「規定を満たせば許可は出す」としていますが、許可審査の透明性やスピードに不安を感じる声も多いようです。

日々の価格動向と業界のリアルな声

4月以降、欧州の希土類磁石価格は20％以上上昇し、ジスプロシウムやテルビウムの国際価格も高騰しています。中国国内では価格は比較的安定していますが、輸出許可待ちによる納期遅延や取引先の見直しが相次いでいます。
日本の自動車メーカーや電子部品メーカーは「今後も供給不安が続く」として、調達戦略の再構築を進めています。特にEV向けモーターや高性能センサーなど、希土類依存度の高い分野での影響が顕著です。

過去との違い──2025年の管理強化はどう異なる？

2010年の尖閣諸島問題時のような全面禁輸ではなく、今回は「許可制」という柔軟な手法が取られています。これにより、中国は国際社会からの批判を抑えつつ、必要に応じて輸出量や輸出先を調整できる余地を残しています。
また、対象品目も金属原料だけでなく、合金や磁石、化合物といった高付加価値製品にまで広がっており、世界の産業構造に与えるインパクトもより大きくなっています。

今後の展望──日本と世界はどう動く？

短期的にはサプライチェーンの混乱や価格の乱高下が続く見通しです。日本や欧米は代替調達先の開拓やリサイクル技術の開発を急いでいますが、中国の精製・加工能力にすぐに追いつくのは難しい状況です。
中国側も国際世論や経済への影響を見ながら、輸出許可の運用を柔軟に調整する可能性があります。各国の政策や企業の対応が今後の市場動向を大きく左右しそうです。

文化的・経済的背景──資源管理は中国の国力の象徴

中国にとって希土類など戦略資源の管理は、単なる経済政策ではなく「国力の象徴」ともいえます。一方、日本や欧米の投資家・メーカーにとっては、サプライチェーンの安全保障が最重要課題となりました。
資源・技術・地政学が複雑に絡み合う現代のグローバル市場で、中国の動向は今後も世界中から注目され続けるでしょう。