ユナイテッドヘルス株価17%急落：メディケア詐欺の刑事捜査で医療保険大手に危機

ユナイテッドヘルスに対する刑事捜査：現在判明していること

米医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループが深刻な危機に直面しています。米司法省がメディケア（高齢者・障害者向け公的医療保険）詐欺の疑いで同社に対する刑事捜査を行っていることが明らかになりました。2025年5月15日にウォール・ストリート・ジャーナルが最初に報じたところによると、司法省のヘルスケア詐欺部門が捜査を主導しており、特にユナイテッドヘルスのメディケア・アドバンテージ事業に焦点を当てているとのことです。潜在的な刑事告発の正確な内容はまだ不明ですが、事情に詳しい関係者によれば、この捜査は少なくとも昨年夏から進行しているとされています。

この報道は、ユナイテッドヘルスにとって特に波乱の時期に明らかになりました。CEOのアンドリュー・ウィッティ氏が突然辞任し、医療費の高騰を理由に2025年の財務見通しを撤回したわずか1日後のことです。この報道に対し、ユナイテッドヘルスは声明を発表し、司法省から刑事捜査に関する通知を受けていないと主張し、同社のメディケア・アドバンテージプログラムの誠実性に自信を示しつつ、ウォール・ストリート・ジャーナルの報道を「極めて無責任」と非難しました。

市場の反応は厳しく、ユナイテッドヘルスの株価は木曜日に約17%下落して274.35ドルとなり、5年来の安値に近づきました。これはCEO退任発表後の火曜日に18%下落したのに続くものです。全体として、ユナイテッドヘルスの株価は今年に入って驚異的な46%下落し、わずか1ヶ月で6,000億ドルあった時価総額から3,000億ドル以上が消失しました。

捜査の中心にあるメディケア・アドバンテージの問題

司法省の刑事捜査は、ユナイテッドヘルスのメディケア・アドバンテージ事業に焦点を当てており、この事業は近年ますます厳しい監視下に置かれています。メディケア・アドバンテージは、ユナイテッドヘルスのような民間企業が、65歳以上の高齢者向けの基本的なメディケア保障に歯科や視力ケアなどの追加サービスを含めたメディケア承認プランを提供することを可能にするプログラムです。

問題となっているのは、ユナイテッドヘルスがメディケアからより高額な払い戻しを受けるために患者の診断を誇張していたかどうかです。メディケア・アドバンテージプログラムでは、より深刻な健康状態の患者をカバーする保険会社はより多くの支払いを受けるため、時には疑問の余地がある方法で広範な診断を報告するインセンティブが生じる可能性があります。

これは今年、ユナイテッドヘルスのメディケア・アドバンテージ事業が連邦政府の調査を受けるのが初めてではありません。2025年2月、ウォール・ストリート・ジャーナルは、司法省が追加支払いを確保するために診断を誇張していたかどうかを判断するための民事詐欺調査を行っていると報じました。当時、ユナイテッドヘルスはこの報道を誤報として退け、新たな調査を認識していないと主張しました。

しかし、株主訴訟で明らかになった3月11日付のユナイテッドヘルス弁護士の内部メールでは、政府がOptumのコーディング慣行について質問を投げかけていたことを認め、調査は初期段階にあると言及していました。

リーダーシップの危機とスティーブン・ヘムズリーの復帰

増大する課題に対応するため、ユナイテッドヘルスはスティーブン・ヘムズリーをCEOとして復帰させ、会社の発表によれば「個人的な理由」で辞任したアンドリュー・ウィッティ氏に代わりました。2017年まで10年以上にわたり組織を率いていたヘムズリー氏は、現在、複数の連邦調査、コスト増加、サイバー攻撃の余波を通じて会社を導くという困難な任務に直面しています。

チーフ・エグゼクティブ・リーダーシップ研究所のジェフリー・ソネンフェルド氏は、ユナイテッドヘルスにおけるリーダーシップの急速な移行が非常に重要であると指摘しています：「取締役会が行動した速さは、CEOに対する明らかな信頼喪失を示しています。彼らがこれほど迅速に行動したのであれば、それは深刻なはずです。これは注目に値します。」

ユナイテッドヘルスはウィッティ氏の退任を彼自身の選択として特徴づけ、彼が上級顧問として継続すると述べていますが、一部のアナリストはウィッティ氏が退任を強いられた可能性があると推測しています。ソネンフェルド氏は、「個人的な理由」はこの崩壊の恥ずかしさに対する婉曲表現であると示唆しました。

ヘムズリー氏は就任にあたり、ウィッティ氏が「どんな企業も直面する可能性のある最も困難な時期の一つ」において真の誠実さと思いやりを示したと称賛しました。しかし、彼はまたユナイテッドヘルスの最近の問題に対する不満を表明し、会社の数多くの課題に迅速に対処する必要があるでしょう。

悲劇的な背景：ブライアン・トンプソンの死とその余波

ユナイテッドヘルスの問題に加え、2024年12月のブライアン・トンプソンの死という悲劇的な背景があります。ユナイテッドヘルスケア（ユナイテッドヘルス・グループの保険部門）のCEOだったトンプソン氏は、ユナイテッドヘルスの年次投資家デーのためにマンハッタンのホテルに到着した際に銃撃されました。この衝撃的な事件は、保険会社が医療ケアの拒否や遅延から利益を得ているという議論を再燃させ、これらの問題が暴力行為に寄与した可能性があります。

トンプソン氏の死後、ユナイテッドヘルスは治療承認を制限する可能性のあるプロセスを緩和することを約束しました。このアプローチの変更は、同社が2025年の財務見通しを撤回する際に引用した医療費の予期せぬ増加に寄与した可能性があります。

その後、株主のグループがユナイテッドヘルスに対して法的措置を開始し、同社が医療ケアを拒否することを目的とした企業戦略を隠蔽し、トンプソン氏の殺害が業務に与える影響を曖昧にしたと主張しています。マンハッタンの連邦裁判所に提出されたこの訴訟は集団訴訟の地位を求め、株主がこれらの行為の結果として損失を被ったと主張しています。

この訴訟は、2024年12月から2025年4月の間にユナイテッドヘルスの株式を取得した人々に対する損害賠償を求めており、同社はこれらの請求に異議を唱える意向を表明しています。原告は、トンプソン氏の死の前に発表された2025年の財務予測が、その後の混乱の中で急速に誤解を招くものとなったにもかかわらず、同社は今年初めにこれらの予測を引き続き確認していたと主張しています。

財務的影響と市場の反応

ユナイテッドヘルスへの財務的影響は壊滅的でした。アナリストの予測を大幅に下回った2025年4月の決算報告以来、同社の株価は33%下落し、1,500億ドル以上の時価総額が消失し、2021年夏以来の最低点を記録しました。

刑事捜査のニュースに続く木曜日の追加的な17%の下落は、投資家の信頼をさらに侵食しました。みずほのヘルスケア株式ストラテジストであるジャレッド・ホルツ氏は、木曜日のメールで、より一貫した証拠が現れない限り、同社がダウ・ジョーンズ工業株平均から除外されるリスクがあると指摘しました。

投資家は現在、来年のユナイテッドヘルスのメディケア・アドバンテージ健康保険事業における戦略的変更を慎重に期待しています。検討中の戦略には、メディケア・アドバンテージプランを提供している収益性の低い市場からの撤退、コスト効率の良い医療提供者へのアクセスを容易にし、高価なブランド薬よりも低コストのジェネリック薬を強調する健康保険プランの再設計などが含まれる可能性があります。

プランの問題に対処した後でも、投資家はまだ10億ドルを超える可能性のある法的和解を考慮する必要があるかもしれません。さらに、事前承認や請求拒否などの保険会社が伝統的に使用するコスト管理戦略は、トンプソン氏の悲劇的な死以来、公的および立法的な反発に直面しています。

医療業界への広範な影響

ユナイテッドヘルスの危機は、特にメディケア・アドバンテージプログラムに関して、医療業界全体に広範な影響を与えています。この調査は、司法省が最近、米国最大の健康保険会社3社に対して、メディケア・アドバンテージプランに患者を誘導する見返りにブローカーに多額のキックバックを支払ったとして訴訟を起こすなど、メディケア・アドバンテージへの監視が強化される中で行われています。

メディケアでカバーされている6,500万人のうち約半数が、民間保険会社が管理するメディケア・アドバンテージプランに登録しています。これらのプランは人気が高まっていますが、現在の調査はこれらのプログラムの運営方法と規制方法に重要な改革をもたらす可能性があります。

司法省の調査の中心にあるのは、保険会社が追加の診断を文書化することでより大きな払い戻しを受ける、しばしば最小限の医学的正当性しかないメディケア・アドバンテージ自体に対する長年の批判です。報告によれば、ユナイテッドヘルスは医師に追加の状態を記録するよう奨励し、時にはインセンティブを与え、その結果、数十億ドルの追加連邦資金を獲得したとされています。

調査が勢いを増せば、それはユナイテッドヘルスの軌道を変えるだけでなく、メディケア請求に関する業界全体の方法論を変革する可能性があります。その結果は、民間保険会社が政府のヘルスケアプログラムとどのように相互作用するかを再形成し、業界とこれらのサービスに依存する何百万人ものアメリカ人の両方に広範な影響を与える可能性があります。

法的課題と株主の行動

司法省の刑事捜査に加えて、ユナイテッドヘルスは複数の法的課題に直面しています。ユナイテッドヘルス・グループの投資家を代表して証券詐欺訴訟が提起され、投資家がこの集団訴訟に参加する期限は2025年7月7日となっています。この訴訟は、ユナイテッドヘルスの証券を購入した投資家を代表して、1934年証券取引法のセクション10(b)および20(a)に基づく請求を主張しています。

訴訟では、同社が長期にわたり利益を増やすために不適切に健康保険を拒否する企業戦略に関与してきたと主張しています。この戦略は規制当局の監視と公的な怒りを引き起こし、最終的に2024年12月のブライアン・トンプソンの死につながりました。この怒りに対応して、ユナイテッドヘルスは健康保険請求を不適切に拒否する戦略を緩和しました。この戦略の変更にもかかわらず、同社は以前の財務ガイダンスを維持し、訴訟ではこれが誤解を招くものだったと主張しています。

この証券詐欺訴訟に加えて、ユナイテッドヘルスは司法省が開始した独占禁止法訴訟に対応しており、これは在宅医療提供者アメディシスの33億ドルの買収を阻止しようとするものです。同社はまた、規制当局が医療費の上昇への寄与を調査する中、そのファーマシー・ベネフィット・マネージャーであるOptumRxに関しても精査を受けています。

以前は、株主が会社に責任を負わせようとし、信仰に基づく投資家の連合がケアの拒否がビジネス、経済、および患者全体にどのように影響するかについての調査を求めていました。しかし、この提案はユナイテッドヘルスによってブロックされた後、先月撤回されました。