マイクロソフト、258億ドルの記録的利益にもかかわらず6,000人の従業員を削減

マイクロソフトの戦略的人員削減：3％カットの全容

マイクロソフトは2025年5月13日、全世界の従業員の3％未満にあたる約6,000人の人員削減を実施すると発表しました。この決定は、あらゆる職位、チーム、地域にわたる従業員に影響を与えるもので、2023年初頭に10,000人の削減を行って以来の大規模な人員整理となります。

マイクロソフトの広報担当者は「当社は、ダイナミックな市場で成功するために最適な立場を築くべく、必要な組織変更を継続的に実施していきます」と述べています。この人員削減の主な目的の一つは管理職層の削減であり、より俊敏で効率的な組織構造を目指すものです。

2024年6月末時点でのマイクロソフトの全世界の従業員数は約22万8,000人で、そのうち55％が米国内で勤務しています。今回の削減により、本社があるワシントン州では1,985人が影響を受け、そのうち1,510人がオフィス勤務者、残りの457人がリモート勤務者とされています。

影響を受ける部門と人員削減の範囲

今回の人員削減は、LinkedInやXboxを含むマイクロソフトの様々な部門に影響を与えることが確認されています。今年1月に実施された前回の削減（従業員の1％未満に影響）が個人の業績評価に基づいていたのに対し、今回の削減は従業員の個人的なパフォーマンスとは関係なく、企業の戦略的な再編の一環として行われています。

ワシントン州での削減対象者の約17％は管理職であり、これはマイクロソフトが掲げる管理構造の簡素化という目標と一致しています。この管理階層の削減という傾向は、AmazonやGoogleなど他の大手テクノロジー企業でも見られています。

米国内の影響を受ける従業員は60日間給与が支払われ続けますが、この期間は各国の法規制によって世界各地で異なります。マイクロソフトは、世界中の様々な事業部門にわたる削減の詳細な内訳を提供していませんが、ワシントン州のデータによれば、ソフトウェアエンジニアリングが最も大きな影響を受ける職種カテゴリーとなっており、同州での削減の40％以上を占めています。

好調な業績にもかかわらず実施される人員削減

今回の発表が特に注目を集めているのは、マイクロソフトが数週間前に市場予想を上回る好調な業績を発表した直後に行われたことです。2025年第1四半期の決算では、売上高が前年同期比13％増の701億ドル（約10兆3,000億円）、純利益が18％増の258億ドル（約3兆8,000億円）に達したと報告されています。

特にAIサービスとそれを支えるインフラ事業は好調で、サーバー製品およびクラウドサービス部門の収益は22％、インテリジェントクラウド部門全体の収益は21％増加しています。マイクロソフトのクラウドコンピューティングサービス「Azure」は、AIへの需要の高まりによって大きく成長しています。

2025年度の最初の9ヶ月間では、利益は746億ドル（約6兆6,768億円）、売上高は2,053億ドル（約18兆3,734億円）に達し、それぞれ12.9％と13.8％の増加を記録しています。この好調な業績にもかかわらず人員削減を実施するという決定は、マイクロソフトの長期的な戦略的方向性を示唆しています。

人工知能への巨額投資と戦略的転換

マイクロソフトの人員削減は、同社が人工知能インフラに巨額の投資を行っている時期に発表されました。2025年度には、AIサービスの提供における容量制約に対応するためのデータセンター拡張を中心に、約800億ドル（約11兆7,000億円）の資本支出が計画されています。

この人員削減と巨額のAI投資の並行は、マイクロソフトの戦略的転換を浮き彫りにしています。同社は従来の役割からリソースを再配分し、AI中心の未来へと方向転換しているようです。CEOのサティア・ナデラ氏は以前、マイクロソフト内の一部プロジェクトでは、コードの約30％がAIによって生成されていると述べており、これは同社内でのソフトウェア開発アプローチの根本的な変化を示唆しています。

金融アナリストたちはこの動きを前向きに解釈しています。例えばバークレイズは、特にAIインフラのコストが中期的に増加し続ける中で、この人員削減は収益性の高い成長へのコミットメントを示すものだと見ています。マイクロソフトの2025年度の予測営業利益率はこの人員削減がなくても変わらないものの、アナリストたちは2026年度の利益率向上につながる可能性があると指摘しており、これは将来を見据えた財務戦略を示しています。

テクノロジー業界の動向と広範な文脈

マイクロソフトの人員削減決定は、テクノロジー業界全体のより広範な傾向と一致しています。パンデミック期間中の積極的な採用の後、多くのテクノロジー企業は現在、人員ニーズを再調整・再評価しています。Amazon、Google、Meta Platforms、CrowdStrikeなどの企業も、ここ数ヶ月で同様の措置を発表しています。

Meta Platformsは1月に、パフォーマンスに基づいて約5％の人員を削減する計画を発表し、その後新たな人材を採用する意向を示しました。Salesforceも2月に、AIに焦点を当てた新たなポジションのために約1,000人の削減を計画していると発表しています。

この業界全体の再調整は、「あらゆる犠牲を払った成長」から、運用効率と戦略的投資を優先する、より慎重なアプローチへの転換を示唆しています。テクノロジーセクターは、企業が人員の継続的な拡大よりも既存のリソースの最適化に焦点を当てる新たな段階に入りつつあるようです。

好調な四半期決算の直後にマイクロソフトが発表したタイミングも、投資家の信頼を維持しながら費用を管理するという積極的なアプローチを反映しています。困難な状況からではなく、財務的な強みのある立場からこれらの変更を実施することで、マイクロソフトは急速に進化するテクノロジー環境における課題と機会をより効果的に乗り切る態勢を整えているのかもしれません。

従業員の反応と将来の展望

報道によれば、人員削減の発表は従業員と一般市民の両方から批判を受けています。一部の従業員は突然の最後の瞬間のミーティングで解雇を通知され、このプロセスの扱い方について懸念が生じています。また、不十分な退職金パッケージに対する認識も生まれており、株主主導の厳しい決断がテクノロジー業界の風景を支配しているという物語を助長しています。

これらの反応は、戦略的必要性として提示される場合でも、企業が大規模な人員削減を実施する際に直面する課題を浮き彫りにしています。このような決断の人的影響は見過ごすことができず、マイクロソフトがこの人員削減の余波をどのように管理するかは、従業員のモラルと一般の認識を維持するために重要となるでしょう。

マイクロソフトの副社長スコット・ハンセルマン氏はLinkedInで感情を隠さず、「初めて、自分のビジネス目標ではない理由で人を解雇しなければなりませんでした。彼らは夢を持ち、家賃を支払う人々でした。私は彼らを愛しており、彼らが無事であってほしいと思います」と述べました。彼は「今日は涙の日だ」と付け加えました。

将来を見据えると、マイクロソフトの人員削減は、同社とテクノロジー業界全体に長期的な影響を与える可能性のある重要な戦略的転換を示しています。組織構造を簡素化し、AIイニシアチブにリソースを再配分することで、マイクロソフトは技術開発の次の段階で効果的に競争するための態勢を整えています。

人工知能が労働力変革に果たす役割

マイクロソフトの人員削減は、労働力の変革における人工知能の役割について重要な疑問を提起しています。AIツールがコードの生成と評価においてますます有能になるにつれて、従来は人間のエンジニアによって行われていたソフトウェア開発の側面を担うようになっています。この技術的変化は、テクノロジー企業内で必要とされるスキルと役割を再形成しています。

マイクロソフトのCEOサティア・ナデラ氏は、同社を「蒸留工場」として位置づけ、大規模な汎用AIモデルを小型化し、専門化し、タスク固有のバージョンに洗練させることを目指すビジョンを明確にしています。このビジョンは、マイクロソフトが伝統的に維持してきたものとは異なる労働力構成を必要としています。

同社はMicrosoft 365、Azure、Dynamics 365などの中核的なサービスにAI機能を統合する取り組みを積極的に進めており、AI中心の未来へのコミットメントをさらに強調しています。この戦略的方向性は、技術への投資だけでなく、これらのイニシアチブを効果的にサポートするための人的資源の再調整も必要としています。

アナリストのギル・ルリア氏によれば、マイクロソフトが現在のペースで投資を続ければ、資本支出による減価償却の増加を相殺するために、毎年少なくとも10,000人の人員を削減する必要があるかもしれないとのことです。これは、現在の人員削減が一回限りのイベントではなく、より長期的な調整の一部である可能性を示唆しており、AIによってますます推進される世界でマイクロソフトがどのように運営されるかという根本的な変革を反映しています。